黄昏のアペリティフ Twilight aperitif

失敗した過去をやり直すような喜ばしい感覚がほんの少し僕を満たした。締めつけられるような緊張と期待でドキドキしながら僕はボックスを覗いた。

目に映ったものをはっきりとした言葉で表現することが出来ない。

ただしそこにはさいぜん説明した、カラニジキジの羽毛の持つ鮮やかさと深い底の色をした暗さが渾然となって微動していたということだ。妙に懐かしいような甘っちょろい考察の類や、むかつくような人の英知なんてのが脳裏を去来して、半ば放心した僕をくすぐった。

僕は結局のところ、世間が思いたがるほど悲愴なんかじゃない。それを手にしようとすれば確かに掴むことが出来た。実際、ほんの微かに触れてみたりもしたんだからな。だがそれ以上のことは止めにした。

うつろいやすい人の決意というものを僕なりに知っている。

瞬時に沸いたものとはいえ、あれほど強い願望だったにも関わらず、あれほど気をもたせて興味をそそったものにも関わらず、そしてなお、あれほど予期しない経緯で巡り合ったにも関わらず、僕は僕の失った想いの数々を手繰り寄せてもう一度この脳回路に温存したいとは思わなかった。その前に、それが正真正銘の僕の想念であったのか、何の証拠もないさ。だが、インスピレーションは微妙な色調や霊波のようなもので確固たる証明をしてみせていた。

何よりも僕は、タペストリーの眺めの一切をそうしたみたいに、覗き込んだ箱のなかのものを然るべきものとして認識したのだ。

感受性というものを生得的なものとだけ決めつけることは出来まい。環境からの教導で人は幾らでも研鑽される。ゆえに僕は、精神の領域において自分が多少の偏屈を有した選ばれし者ではあっても、決して過去にも現在にも病的であるとは思っていない。僕の見方からすればそこらじゅうの殆どが、気の毒な偏屈者で占められている。

地位や職責や性(さが)に縛られ、はたまたそれらの付随物である規範に縛られ、彼らの判断基準は鋳型に嵌まったコインの共通性を成して、文字通り金ずくめの社会機構の一端に嵌め込まれているのさ。やることなすこと皆似たりよったりで、衣食住のためにだけ金稼ぎをする。

おすすめ