苛立ちを募らせる僕は、気に入らない状況を肯定したくなくて、益々ジレンマに陥った。 僕の感情が高ぶるのに比例して雲の作った影が月のない夜を招請し、夜は総ての輪郭を濃淡もなく打ち消した。クーラーボックスが、時折口を開けて水晶のような輝きを見せないと、視覚は何を基準にそこらを探っていいのか迷うほどになった。
ボックスは自動的に開き、こぶし大の何かを吸い込み、ひとりでに閉じた。蓋が開くたびに、夜のなかに光輝が穿たれ、宝飾の煌きが散逸した。
暫くはそれも珍しく美しいものだった。お前流に言うなら、ちょうど神秘の女神がまばたきするように闇に光が生まれ、たまさかの希望が閃いたかと思うとまた休眠のせいで辺りが黒一色になるといった具合だ。
その繰り返しは脈打つように交互に、平安と憂鬱を織りなした。新たな疲れが僕を襲った。
僕は永遠にウインクする闇を認識していなくてはならないのか。

そうか、僕は思いついた。そしてすぐに態度を改めた。
この暗さは不快だ。せめて薄ぼんやりでも指標が欲しい。積極的に望むと得られるものだと偉そうな人が言ってたな。
確かに、事態が急変した。だがそれは悪果というに相応しい形だった。ただ単に目下の状況が変わっただけの、ドジな変化とも言えた。
ボックスが開きっぱなしになったのだ。
不味いことにあのナイフはまだ健在で、闇に紛れて活動していた。僕の念力で何故か開けっ放しになったボックスのなかに、ナイフは悠々と滑り込んだ。溢れていた光輝はギザギザになった影に半ば遮られて、これまでより遙かに弱々しい光しか出せなくなってしまった。
